NISAおよびつみたてNISAに関しては現行制度から大幅な変更が議論されており、今後変更がありましたら修正および加筆を行います。(2022年12月時点)
貯蓄から投資へというスローガンから、資産運用などで投資信託を始める方も徐々に増えてきました。
書店の投資コーナーにはありとあらゆる投資関係の書籍が並び、イチから理解するのって結構大変だったりします。資産運用についてはこちらの過去記事も参照にしてみてください『図解で解説!将来のお金を考えよう』
そこで今回は要点をしぼって投資信託のどこを見て買えばコストを抑えながら効率よく運用できるのか、また投資信託にかかる税金面などを簡単な計算をしながらファイナンシャルプランナーの筆者がわかりやすく解説していきます。
またNISAについてのお話もありますので、最後までお読みください。
目次から読みたい解説にジャンプすることも出来ますのでよろしくお願いします。
目次
投資信託には3つの手数料がかかる
投資信託は、購入時・保有中・売却時に一定の手数料がかかります。
近頃は購入時や売却(解約)にかかる手数料は無料としている投資信託はありますが、長期で運用することで複利効果の恩恵を受けられる以上、コスト面は無視できないといえます。
購入時にかかる販売手数料、保有中に日々差し引かれる信託報酬、投信を売却または中途解約するときにかかる信託財産留保額と3つの手数料があります。
投資信託には必ず目論見書という商品説明があり、そこに手数料からリスクなど記されています。
それでは順番にみていきましょう。
- 販売手数料
販売手数料とは投資信託を購入する際に、販売会社へ払う手数料のことです。
投資信託のおもな販売会社には証券会社(ネット・窓口)、銀行、信託銀行、信用金庫、郵便局、生命保険会社、損保会社などの金融機関になります。
販売手数料は平均0〜3.0%で、同じ投資信託商品でも販売する金融機関によっては上限の範囲で異なることに注意しましょう。
また最近では販売手数料がかからないノーロードと呼ばれる投資信託も販売されています。
また積立運用を考えているかたは、販売手数料のコストも考慮するようにしましょう。
毎月1万円で積立する場合、例として販売手数料3.0%の投資信託を定額購入する場合、毎月購入価格に対し3.0%の手数料が取られることになります。(図参考)
年間で3,600円。長期で運用するとなると販売手数料のコストは無視できないといえます。
- 信託報酬
信託報酬とは投資信託を運用するときに日々引かれる手数料をいいます。平均で0.1%〜3.0%程度。
ファンドの運用・管理の報酬で、信託財産から差し引かれます。その信託報酬は運用会社、販売会社、受託会社に配分されます。
投資信託にはS&P500などのベンチマークと連動する運用成果を目指すインデックスファンド(パッシブファンドとも)と、ベンチマークを上回る運用成果を目指すアクティブファンドの2つにわかれます。
とくに近年ではインデックスファンドなどは自動売買などで運用されています。アクティブファンドはプロのファンドマネージャーが業界動向、個別の企業分析などをマクロ・ミクロ経済など運用するために手間がかかるため信託報酬はインデックスファンドに比べ高めとなっています。
信託報酬の違いで長期運用(10年以上)の成果が大きく変わるのも特徴です。(下図参考)
単純に計算するのなら『投資信託の利回り(%)−信託報酬(%)=実質利回り(%)』で計算してみましょう。
複利運用の計算式は
元利合計=元本×(1+年利率)^年数
エクセルやGoogleスプレッドシートではPOWER関数で簡単に求められます。
元利合計=元本×POWER(1+年利回り%,年数)
またWeb上で使える便利な金融電卓もあり、モーニングスターが提供している金融電卓、野村證券が提供しているみらい電卓なども簡単にシュミレーションできるので活用してみてください。
どうですか?信託報酬1%の違いで、投資商品AとBでは最大約80万円は変わることが計算の結果でわかりました。(あくまでも理論値)
信託報酬が高いからダメ、安いのが良いというのではなく、トータルリターンやファンドの純資産流入額、投資する金融資産など総合的にみて判断する必要があります。
とくにコロナショックやリーマンショックなどのように株式市場が下落する局面だと、インデックスファンドもベンチマークに合わさるように下落することもあります。
アクティブファンドなら空売りなどのヘッジングを駆使して、ベンチマークを上回る効果も期待できる可能性もあります。
ただ長期でみた場合の運用成果の違いは無視できないことは頭にいれておきましょう。
- 信託財産留保額
投資信託にかかる手数料の最後は解約または売却にかかる手数料です。平均で0〜0.5%程度。
投資信託には2種類の換金方法があります。
- 解約請求とよばれる、投資家が運用会社(委託会社)に直接、解約請求をする方法
- 買取請求と呼ばれる、投資家が直接販売会社に受益証券(投資信託)を買い取ってもらう方法があります。
保有している投資信託を自分の意志で手放すときにかかる手数料と解釈していただければ大丈夫です。
また信託期限のある投資信託の期限日(償還日)を迎えた投資信託には信託財産留保額がかからないこともポイントです。
前述した目論見書eMAXIS Slim米国株式投信のように信託財産留保額がかからない投資信託もあります。
また一部のファンドでは販売会社に払う解約手数料もとられることもあります。
そして後述する売却益に対しても課税されます。
投資信託にかかる税金
投資信託の課税には『個別元本方式』という課税方法が用いられています。
個別元本とは、投資家が投資信託を購入した平均取得額(基準価額)のことです。また積立の場合、同じ投資信託を複数購入したときは、投信の保有口数で加重平均した価額となります。
細かく理解する必要はありませんが、個別元本方式における収益分配金は、値上がり分の普通分配金と元本払戻金(特別分配金)があります。
課税対象となるのは普通分配金(配当所得)と、解約(売却)など投資信託を手放す際に利益が出た場合は譲渡所得となり課税対象となります。
投資信託における配当所得と譲渡所得はどちらも20.315%の税金がかかります。
上記図を参考に、普通分配金とは分配落ち後の基準価額が個別元本と同額または上回った場合の分配金(収益)を指します。
購入時の基準価額が9,000円、決算時に1,000円の分配があり基準価額は10,600円の場合、普通分配金の対象は1,000円となります。
この普通分配金1,000円が配当所得20.315%の対象となります。(所得税15%,住民税5%,復興特別税0.315%)
元本払戻金(特別分配金)とは、投資家が保有している投資信託の個別元本が分配落ち後の基準価額を下回った場合、受け取った分配金は投資元本の払い戻しになるので非課税になります。(下記図参照)
購入時の基準価額が10,000万円、決算時に1,000円の分配金があり、決算時の基準価額が10,600円の場合。400円は元本払戻金に相当するので非課税。600円は収益となる普通分配金にあたるので課税対象となります。
仕組みを説明しましたが、普通分配金に税金がかかり、特別分配金(元本払戻金)は非課税だけ覚えておけば問題ありません。
また分配金を受け取らずに再投資を選択した場合も、分配金を受け取ったものとみなして課税されることに注意しましょう。
そして投資信託の解約(売却)時に出た差益には、譲渡所得として申告分離課税の対象となります。
課税対象となる譲渡所得金額の計算式を下記図にあらわしておきました。
購入時の販売手数料、解約時にかかる信託財産留保額などの手数料などの経費を引いて計算するのがポイントです。
NISAで上手に節税しよう!
貯蓄から投資へのスローガンのもと国が支援する優遇制度、NISA(少額投資非課税制度)。
現在、『一般NISA』『つみたてNISA』『ジュニアNISA』と3つの種類があります。(下図参照)
これから口座開設をする場合は、一般NISAかつみたてNISAどちらか一方しか選べないので注意してください。
一般NISAは年間非課税枠120万円の範囲で5年間の非課税期間が設けられています。
つみたてNISAは年間40万円までの投資で得た利益が最長20年(2022年現在)非課税期間となり、最大で800万円の非課税枠を利用できます。
特につみたてNISAにおいてはリスク分散の観点からも、長期で積み立てることが基本となる投資信託においては積極的に活用したい制度といえます。
つみたてNISAの年間非課税枠は最大40万円。月に換算すると、毎月約33,000円(400,000÷12ヶ月)までの範囲で投資信託を積立購入することができます。
投資できる商品は、金融庁が認めた投資信託やETFに限定されますが、約6000本ある投資信託の中から国が厳選した投資商品から選べるなどのメリットはあります。
非課税期間の20年終了後は課税口座へ移すか売却、どちらかを選択します。(今後制度の変更があるかもしれません)
20年にこだわらず、途中で売却する場合も非課税期間内の運用益には税金がかかりません。
また一般NISAに2024年に新制度へ移行することになっていますので、今後若干の制度変更もあるかもしれませんが、要点を下記図にまとめておきました。
一般NISAは現行の非課税枠120万円から122円まで拡大。非課税枠が一階部分の2階部分にわかれ、より中・長期に適した制度へ変更予定です。
まとめ
投資信託の基本、コストと税金はいかがでしたでしょうか?
販売手数料、信託報酬、信託財産留保額に加え税金とあらゆるコストがかかることは理解できたでしょうか。
特に長期・積立を基本とする資産運用ではそれぞれにかかるコストはたとえ数%でも無視できないと言えるでしょう。
賢く運用するためにもぜひ今回の記事を参考にして、投資信託選びに活用してみてください。
今後は投資信託のリスクとリターンなどの記事も載せていきますので、引き続きよろしくお願いします。
FPオススメ!投資信託の勉強に役立つ書籍3選
新屋真摘著 『はじめての資産運用』
ファイナンシャルプランナー新屋真摘さんによる資産運用についての本。イラストとマンガによる解説が豊富で投資初心者にもわかりやす理解できる内容構成になっています。資産運用のイロハを一冊で知りたい方にオススメの一冊です。
朝倉智也監修 『はじめての投資信託』
金融WEBサイトのモーニングスター株式会社代表取締役社長 朝倉智也さんが監修の『はじめての投資信託』購入から商品選び、勝てる投信24本など商品紹介もあり、実際の投資信託商品を見ながら投信信託について知ることができる一冊です。図解やコストやリターンの計算なども解説され、とてもオススメできる一冊になっています。
大竹のり子著 『日本一やさしいNISA &iDeCoの学校』
ファイナンシャルプランナー、株式会社エフピーウーマン代表の大竹のり子さんの『日本一やさしいNISA &iDeCoの学校』国が進める投資非課税制度であるNISAとiDeCoについて、豊富な図解で解説されいる一冊です。2024年から開始される新NISAにも対応しているので、節税しながら賢く資産形成するためもぜひ理解してもらいた内容となっています。
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