こんにちは。ファイナンシャルプランナーが教えるお金の講義。今回は『債券』と『金利』の関係をわかりやすく説明したいと思います。
預金金利や住宅ローンや事業借入などの金利、そして金利が変わると為替や株価などにも影響をあたえる金利。
そしてわたしたちの暮らしや投資にも関わる金利。
債券価格が変われば、なぜ金利も変動するのか。今はいまいちピンとこなくてもこのブログを読み終えるころには理解できるようになります。
それでは一緒に勉強を始めましょう!
目次
はじめに
画像のチャートは「アメリカ債券10年価格」と「アメリカ債券10年金利」を上下に配置したものです。
勘のいい方は気付かれたと思いますが、債券価格と金利は逆相関の関係になります。
つまり債券価格が下がり金利が上昇、債券価格が上がり金利が低下する。
すなわち債券価格と金利は反対の値動きになります。
ややこしいようで仕組みを知れば意外に簡単です。
債券と金利がわかれば世界の経済や景気の動向などが理解できるようになります。株やFXなどの投資をする上でも、金利動向は重要な指標になります。
むずかしい用語などは省いて、シンプルでわかりやすく説明していきたいと思います。
そもそも債券とは?
債券とは別名『借用証書』とも呼ばれています。図のイメージでなんとなく理解できれば大丈夫です。
国や会社などの団体が投資家から資金調達をする手段です。
株券と同じく債券という紙に財産価値があり、これを発行することを『有価証券』といいます。
※現在は株券も債券もペーパーレス化し電子化されています。
つまり債券を発行するということは借金をするということです。
株も投資家から資金調達する手段で同じですが、大まかな違いは債券には償還期限(満期日)と利子収入があることでしょうか。
※利子はクーポンともいいます
株もインカムゲインと呼ばれる配当収入などはありますが、現金化するには市場で売却しないといけません。
債券も償還日を迎えるまでは市場で売買出来ますが、基本的には満期日まで所有していると額面の金額が返ってきます。そして所有している期間は毎年利子収入がもらえます。
債券の額面と金額が同じことを「パー」といいます。額面より購入金額が低いことを「アンダーパー」額面より購入金額が高いことを「オーバーパー」といいます。
債券にも非常にたくさんの種類がありますが、ここでは大まかにわけてみましょう。
- 国が発行する国債や、地方公共団体が発行する地方債
- 政府が発行する政府保証債
- 株式会社などが発行する民間債(社債など)
- 特定の金融機関が発行する金融債
ほかにもNTT債や電力債、公募債や私募債などがあります
大まかにわけると債券にもこれだけの種類があります。しかも新規発行する「新発債」、既に発行され市場で売買されてある「既発債」などもあります。また国内向けや外国向け債券なども存在します。
そして一つの債券でも「償還期間(満期日)」「利率(クーポン)」ごとにそれぞれ枝分かれしていますし、利子が貰えないかわりに購入金額を低くした「割引債」など非常に多くの債券が発行され市場で売買されています。
すべての債券を説明すると今回の記事の趣旨からは離れてしまうので、今回は数ある種類の債券から、金利の基準になる国が発行する『国債』に目を向けて、説明していきましょう。
国債とは?
国が発行する国債とは何なのかを簡単にご説明しましょう。
債券とは投資家から資金調達、すなわち債券という借用証書を発行し借金をすることでしたよね。
国債発行とは国が税収だけでは足りないお金を補填するために、金融機関や法人または個人から借金するということです。
※個人向けの国債など直接買っている人もいますが、わたしたち個人も銀行預金や郵便貯金、または生命保険会社の運用などを通じて間接的に国債を購入していることになります。
金融機関、ここでは銀行にしておきましょうか。日本の中央銀行である「日本銀行(日銀)」と日本政府(債務者)、メガバンクなどの民間銀行が活発に国債を売買、または国債を担保に資金を借入することによって金利が決まってきます。(今回のテーマではこの程度で大丈夫です)
日本の中央銀行である日銀(日本銀行)は、「日本銀行券」すなわち現金の発行以外にも、国債発行の事務手続きや債券の発券などを行なっています。
詳しくは別のブログで書きます。
それでは債券や国債など、取引の流れなど大まかに理解出来たところで、簡単な計算式を用いて金利についての勉強にはいりましょうか。
金利とは?
それでは金利のお話に入りましょうか。
金利とは、お金を借りた人が貸してくれた人に借りた金額に上乗せして返すお金のこと。
例えば友人のAさんに100万円を1年後に返してもらう約束で貸すと仮定しましょうか。
貸し手側からすると自分の預金から引き出したお金をAさんに1年間貸すとなると、その1年で受け取れたはずの預金利子が受け取れなくなりますよね。
※友人同士の貸し借りで金利をとるのは稀ですが(笑)
銀行の普通預金金利がだいたい0.002%程度。わかりやすくするため税金は除外して、100万円の預金利子20円が友人Aさんに貸すことで受け取れなくなりました。
借り手側のAさんからすると、貸してくれた友人のお金を自由に使えなくするわけだから、返す時には元の100万円に対し、お礼の気持ちも含めて上乗せして返しますよね。
つまるところ、金利とはお金の貸し借りにおける代償のことなんです。
金利の始まりは種籾(たねもみ)がルーツとゆわれています。メソポタミアの大地で種籾をたくさんもっている人が持っていない人に貸し、収穫期になって借りた分の種籾に利子分を加えた種籾を返すことです。また江戸時代の日本では、醤油や味噌は頻繁に貸し借りが行われていて、返す時に少し多めに返す。これも金利の考え方でしょうか。
ここでは、利息や利子、利回りなどをまとめて金利と表現していきましょう。
金利の計算式の種類と用語
今回お話する債券含め、金利の計算には数種類の計算式があります。
- 表面利率(クーポン)とは→債券の収益率を決める条件の一つです。例えば額面100万円につき5%の表面利率が書かれていたら、100万円の投資で一年あたり5万円の利子所得を得ることができるということです。
- 購入価格とは→債券を実際に購入した価格のことです。
- 額面価格とは→債券を購入する際の最小単位額のことです。
- 発行価格とは→債券を新規に発行する際の購入金額のことです。額面100円の1年短期債券が発行価格95円なら、発行時に95円で買うことができ、一年後の満期時に100円で返してもらえるということです。その差額(100-95=5円)の5円が一年あたりの利回りになる。
直接利回りとは
投下したお金に対する利回り収入の割合のこと。ざっくり毎年確実に手に入る利子を求めるのに使われる計算式です。
所有期間利回りとは
たとえば債券を償還日(満期)までに保有せず途中で売却しときの保有期間のみの利回りを求めることができます。
最終利回りとは
単純に利回りといった場合に指すのがこの最終利回りです。債券の収益性は基本的には最終利回りで計算されます。つまり債券を償還日(満期)まで所有し続けた場合の最終的に確定する一年あたりの利回りという意味です。
応募者利回りとは
新しく発行された債券(新発債)を発行された日から償還日(満期日)まで保有した場合に得ることができる利回りのことです。新発債の募集から、これに応じて債券を取得する人を応募者と呼ぶことから、この呼び名になりました。
以上の計算式から貸したお金や投資したお金に対して受け取れる利回りを求めることができます。
債券価格と金利の計算
それでは金利の計算式と用語の意味を理解したところで、債券価格と金利(利回り)の変化を実際に計算しながらみていきましょう。
わかりやすくするため発行価格と額面金額は同じ100円にしました。満期10年・年利(金利)2%の債券Zを例にしましょう。
債券Zをそのまま計算式(1)にあてはめて計算すると、年利通り2%になりますね。
では5年後の市場金利が3%に上昇すると債券価格はいくらになるでしょうか。これを計算式(2)で計算していくと。
債券価格=(100+利率×残存年数)/(100+利回り×残存年数)×100
(100+2×5)/(100+3×5)×100=95.652…
金利が3%に上昇すると債券Zの価格は95.65円に低下しました。
では反対に5年後の市場金利が1%へ低下したら?計算式(3)にあてはめて計算してみましょう。
(100+2×5)/(100+1×5)×100=104.76…
金利1%に低下すると債券Zは104.76円に上昇しました。
金利が上昇すると債券価格が下落し、金利が低下すると債券価格が上昇する。
これで金利と債券の関係性がつかめたでしょうか?
実際は額面価格と発行価格、償還年数など多種多様な債券が市場に流通しているので債券は複雑ですが、簡単にわかりやすく説明するとこの考え方で問題ありません。
補足
債券価格と利回りの関係が理解できたところで、債券市場に流通している債券価格を把握したり、1〜2年債の短期金利と10年債の長期金利をプロットして出るイールドカーブなども少し説明したいと思います。
イールドカーブ
イールドカーブとは1〜2年債券などの短期金利と10年債券のような長期金利をグラフにプロットして結んだ線のことです。日本語では利回り曲線といいます。
短期金利は低く長期金利は高くなる右肩上がりの曲線を順イールドカーブと呼ばれる曲線になります。
逆イールドカーブとは短期金利が長期金利よりも高くなる状態で右肩下がりの曲線を描きます。市場では景気後退のサインとして認識されています。
フラット化は短期金利と長期金利が等しい関係です。
スティープ化とは順イールドカーブの曲線が長期金利になるにつれ傾きが急になることをいいます。
一般的に金利の振れ幅は短期になるほど大きくなります。わかりやすいように先ほどの債券Zを例にして計算してみましょうか。
債券Zの発行価格を100円→101円に債券価格の市場価格が変わりました。これを満期の10年と1年の短期に置き換えて計算すると…
10年債券の利回りは1.9%へ。1年利回りは1.0%へ。それぞれ元の金利の2%からの変動幅が大きいのは1年の短期債券ですよね。
債券価格が同じ1円変わっただけで短期と長期では振れ幅は短期の方が大きくなります。
今度は逆に市場金利が1%変わるだけで債券価格は長期の方が振れ幅が大きくなってしまいます。
基本的なイールドカーブの考え方はこのようになります。イールドカーブは景気の良し悪しや株価などにも影響するので金利変動は複雑です。
債券価格と金利を知るには
債券価格と金利を知るには、証券会社のWEBサイトや日経新聞のマーケット概況などで日々更新されています。
わたしはinvesting.comが株価や為替などまとめてチェックしやすいのもあり主にこちらを活用しています。
日本国内含め、諸外国の債券先物価格や金利など網羅されています。
これらを参考に自分が見やすいWebサイトなどで債券と金利の動向をチェックしてはいかがでしょうか。
まとめ
債券価格が上昇すれば金利は低下し、債券価格が低下すれば金利は上昇する。
計算式を用いて計算すれば、その関係性が理解できたと思います。
日本は長年超低金利でずが、世界経済の中心国アメリカは金融引き締めで金利が上昇するなどのニュースが出ています。
イールドカーブの初歩的な話もしましたが、短期金利と長期金利の差の長短金利差縮小や逆転は株式市場などに大きな影響を及ぼします。
今回のブログでは債券と金利の関係性を理解することに重点を置きました。今後数回にわけて金利と債券価格が変動する理由や、為替や株式への影響、また住宅ローン金利などの暮らしに関する金利などについて詳しく書いていきますので楽しみにしていてください。
この記事へのコメントはありません。