こんにちは。ファイナンシャルプランナーが教えるお金の講義。今回は、金利と債券価格の決まり方についてわかりやすく説明したいと思います。
債券価格と金利(利回り)の関係性は、過去のブログ『債券と金利の関係』に詳しく書いていますので、こちらをご参照ください。
目次
はじめに
長期金利の指標としてウォッチされる10年国債金利は住宅ローンや企業の借入金利など身近にある金利の指標になります。
今回はなぜ金利と債券価格が変動するのか。債券の発行から債券市場、そして景気や信用格付けなどによる変動要因など勉強していきましょう。
今回も過去ブログ債券と金利の関係と同じく10年国債金利を中心に話を進めていきます。
債券とは
債券とは別名『借用証書』と呼ばれ、投資家などから資金調達(借金)したときに発行される有価証券です。
※国債や株券は現在ペーパーレス化されています
一言で債券と言いましても国が発行する国債や民間企業が発行する社債や金融債、地方公共団体が発行する地方債など数多くの債券が発行されています。
また各々の債券においても利子や償還期間などもちがい非常に複雑で多くの種類があります。
今回の記事では利回りの参考指標とされる10年国債について書いていますので、国債について大まかに理解できれば大丈夫です。
国債とは
前回のブログでも解説しましたが、もう一度簡単に国債についておさらいしましょうか。
国債とは国が発行する債券です。国が税収などの収入が支出よりも少ない場合に、資金調達の目的で借金をするために発行されます。
上の円グラフは2021年12月末時点の国債保有者です。
国債総発行数は1,074兆2288億円です。そしてそのうち約半数にあたる48.1%もの国債を日本の中央銀行である日本銀行(日銀)が保有しています。
日本は長年超低金利政策を実施しており、日銀が国債買いオペや指値オペなどを実行しイールドカーブコントロールと呼ばれる金利操作をおこなっております。
※買いオペ・売りオペ・指値オペなどの金融政策については別途記事で解説します。
イールドカーブとは1〜2年国債の短期金利と5〜10年国債の長期金利をプロットして結んだカーブです。日本語では利回り曲線といいます。
通常は短期金利が低く長期金利が高くなる順イールドになるのが普通です。(イールドカーブについては債券と金利の関係で解説しています)
国債は株式と同じく日々市場で売買されており、需給関係や景気などによって債券価格すななち金利が変動しています。
では債券の取引がどのように市場で取引されているのか簡単に説明していきましょう。
債券市場
債券市場は金融市場全体の中の一つの市場にすぎません。
取引期間が一年以上の長期金融市場のなかに債券市場と株式市場に枝分かれしています。
※短期金融市場のなかにあるインターバンクと呼ばれる金融機関のみが参加できる市場にコール市場があり、これは金融機関同士のお金の貸し借りのことを指します。その時の金利をコールレートと呼びこちらは政策金利ですので今回は無視して構いません。
そして債券市場は発行市場と流通市場にわかれています。
債券発行市場
新規発行の国債(新発債)は財務省がその時々の市中金利に応じて発行されます。
主な取引参加者はメガバンクなどの民間銀行、損害・生命保険会社や証券会社が日銀ネットと呼ばれるオンライン端末を利用し、入札により国債を購入しています。(コンベンショナル方式など)
※コンベンショナル方式とは価格競争で入札し発行予定額に達するまで応募価格の高い入札者から落札する方法です
国債は国(財務省)が発行し、発行事務手続きや決済などは日銀がおこなっています。
財務省HPにて各月の新規国債発行スケジュールが公表されています。
債券流通市場
債券発行市場により発行された債券(既発債)は、市場で自由に売買されるようになります。
それが債券流通市場です。株式と同じように収益機会を狙う海外機関投資家や安全資産として運用益を狙う国内の銀行や保険会社などが頻繁に売買しています。
さらに債券市場には取引所での取引と店頭取引(相対取引)があります。
取引所での取引は上場株式と同じく取引所を通じて売買される形式です。債券にも上場銘柄があり、長期国債・超長期国債や転換社債型新株予約付き社債等などの一部の債権が上場銘柄に該当します。上記以外の多くの債券は上場されていません。
上場されていない銘柄に関しては、店頭取引(相対取引)にて売買されることになります。
店頭取引とは電話やインターネットなどで民間銀行などの金融機関どうしで直接売買することです。
もちろん一般企業や個人向け国債なども広義の意味では店頭取引に該当します。個人向け国債を購入するには銀行の窓口へ行ったり、電話やネットで銀行や証券会社から購入するようなイメージです。
債券のおもな取引はこの店頭取引で行われているのも特徴の一つです。先にも述べましたが、債券には短期や長期などの償還期間の違い、国債や民間債など発行元による違いなど、株式以上に非常に多くの債券が流通しているので、その複雑さから取引所での取引には馴染まないという側面があります。
それに加え政策金利などにより市場金利が同じように変動していくので、株式の個別銘柄のように需給関係で価格が変動するものでもないので、店頭取引(相対取引)が中心になっています。
債券相場の参考となるのが大阪証券取引所に上場されている債券先物の価格が、債券相場の参考価格としてウォッチされています。
債券は利回りで取引される
債券の発行市場と流通市場が理解できたところで、なぜ国債(債券)は債券価格でなく利回りで取引されるのかをみていきましょう。
上記の資料でA国債とB国債、償還期間は同じ3年でも価格と利子だけをみてもぱっと見ではどっちが得なのかわかりにくいですよね。
式にあてはめて計算して利回りが表示されてやっとどちらに投資したら得か判断できるようになるわけです。
利回りで表示された方がわかりやすいですよね。
取引の中心は10年国債
ここで一つ重要なお話をすると債券市場での取引の中心は10年長期国債が中心になります。それも直近に発行された10年長期国債に集中しています。
債券と一言で申しましても実に数万銘柄以上の債券がある中で、最も発行量が多くかつ定期的に発行される国債が10年国債ということもあり債券の中でも人気が集中しています。
そしてこの10年長期国債の売買により成立した金利が、住宅ローン金利や企業への貸出金利に影響を与えることになります。
債券発行市場でも述べた、新規発行債券(新発債)はその時々の市中金利に応じて財務省が決定すると説明しましたよね。
新発債の金利も国が勝手に決めるわけでなく、市場で流通している金利を基準にして新発債の金利を決めるわけです。
株式を例にすると、ある企業が新株を発行するときに株式市場での株価が1株1000円だったとき、1株2000円で新株を発行しても誰も買わないですよね。逆に1株500円で新株発行となると発行済みの株式価格にも影響をあたえますよね。
金利も同じく市中金利からそれほど大きく乖離するようなことがなく国債が発行されるわけです。
金利と債券価格が変動する要因
今回の記事も終盤です。あと少し頑張りましょう。では債券価格と金利が変動する要因を説明しましょう。まずは下の債券価格と金利の関係を念頭に話を進めますので理解しておいて下さい。(詳しく知りたい方はこちらの記事へ)
金利と債券価格は逆に動く
上の図で計算すると金利2.5%の10年国債価格が99円から101円に変われば利回りは2.6%から2.4%に低下しましたね。
つまり逆相関の関係になるわけです。
信用格付けによる要因
国内外には国や企業を格付けする機関があります。日本の代表的な機関は株式会社日本格付研究所(JCR)や株式会社格付投資情報センター(R&I)などがあります。
海外ですとアメリカにあるムーディーズやスタンダード&プアーズ(S&P)、そしてフィッチレーティングスなどがグローバル視点で代表的な格付け機関になります。
S&Pを例に信用リスクと格付け一覧とはこのようなイメージです。
BBB以上が投資適格債と呼ばれ、投資をしても安全にリターンが得られると思って貰えればいいです。反対にBB以下は投資不適格債と呼ばれ信用リスクが高くリターンが得られない恐れがあると思ってもらえれば大丈夫です。
すなわち投資適格債などは信用リスクが低いため買われますよね。需給関係で買う人が多くいれば債券価格が上がり、金利が下がる。格付けで投資不適格となり売る人が多くなれば債券価格が下がり金利が上がるということです。
国の財政破綻で金利が上がりデフォルトするということは、債券を買う人がなくなり債券価格が下がり投資家に払う利払いが苦しくなるためです。
景気
好景気になると住宅や車を買うためにローンを組んでモノを買いますよね。お金の需要が増えるため金利が上がることになります。
反対に不景気になると消費意欲が下がるためお金の需要が減るので金利は下がります。
為替
為替が円高になると輸入品などの物価が下がり、お金の需要が下がるので金利は下がります。
反対に円安になると輸入品の物価が上がり、お金の需要が上がるので金利は上がることになります。
以上が金利と債券価格が変動する主な要因です。一般的な考えではこのように理解してもらえれば大丈夫ですが、株のように教科書通りに相場が動かないところが金融のややこしいところです。
まとめ
ニュースでも報道されているように日本は低金利政策を実施しています。
金利と債券がどのように発行・流通し売買され、そして金利が決まってくるのか。
変動要因なども説明し、理解できましたでしょうか。
こちらの過去ブログ『債券と金利の関係』から読み進めると理解できる内容になっています。
さて次回のお金の講義も金利について書く予定です。
日銀によるオペや政策金利、さらに金利と株価や為替などとの関係性をもう少し掘り下げて説明していきますのでよろしくお願いします。
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