ファイナンシャルプランナーが教えるお金の講義。今回は「金利で得する人と損する人」をテーマに身近な暮らしのお金をベースに利回りの考え方などをシンプルにわかりやすく解説したいと思います。
目次
はじめに
日本は長年にわたり低金利政策により住宅ローンなどは0.5%前後(変動金利)で借りられ、金利に対してそこまでシビアに考えたりしませんよね。
海外ではコロナによる金融緩和により景気が加熱気味になり徐々に金融引き締め(金利高)へと舵取りをすることになりました。
この金利の変動がおよぼす影響などは過去ブログで数回にわたり詳しく解説していますので、大まかに金利について知りたい方は、一読してみてください。
そこで今回は遠い存在に思える金利ですが、考え方によったら金利、すなわち利回りの考え方を日頃から意識すれば少しでも得をしたお金の使い方が出来るようになるので、普段の暮らしにかかるお金をベースに簡単な計算などを使いながら解説していきます。
金利・利回りとは?
それでは簡単に「金利・利回り」について説明しましょう。
投資の収益を知るときやローンの借入を行うときに利回りとか利息とか金利という言葉を目にすると思います。
利子・利息・利回り・利率・利子率、あとは金利。似たり寄ったりな意味合いなので、特に区別する必要はないですが、読み物程度にさらっと説明します。
利子と利息については郵便貯金は利子と呼び、民間の銀行預金を利息と呼ぶのが古くからの慣例となっています。
利率と利回りは、利率とは利子を計算するときの基準になる金利のことです。たとえば年利率5%となっていれば、年あたりに基準となる元本の5%ぶんの利子つくということです。そして利回り(年平均利回り)とは複数年という期間を通じて得た利益の1年あたりの収益の割合をあらわしたものを利回りと呼んでいます。
利子率とは専門的用語として使われるイメージです。学問的といいますか、小難しくしたような感じで意味は利子に違いありません。
最後に金利とは上記の用語をまとめて表す単語として理解してもらえれば大丈夫です。
身近なことで説明すると金利とは借金をするときに貸し手に払う手数料という意味合いでしょうか。お金を借りるならそれなりに代償が必要ですよね、相手の自由に使えるお金の一部を借り手に貸すわけですから。
借金でたとえましたが、そもそも金利とは『損得』を見るための物差しととらえて良いです。
株や投資信託、債券やFXなどお金を使って運用するのものは金利すなわち利回りでみなければなりません。
元本100万円で不動産に投資して3年後に150万円の利益が出ました。または同じ元本100万円で株を買い3年後に130万円で売却、3年で配当金が合計10万円貰えた。どちらに投資したほうが利回りが良かったか?
このように元本が所有していた期間でどれだけの収益をあげられたのかを見るための物差しが金利・利回り(年平均利回り)といいます。
単利と複利
そして利息の付き方には2種類の計算方法があります。一つずつ計算式とともにみていきましょうか。
単利
単利とは最初に預入または投下した資本、すなわち元本についてのみ利息がつく計算方法です。
計算式は図の通りです。
複利
複利とは、一定期間ごとに支払われる利息も元本に含んで、これを新たな元本として利息を計算する方法です。
複利には一年に一度利息がつくものを1年複利、半年に一度(年2回)利息がつくものを半年複利と呼びます。
計算式を理解したところで実際に単利と複利の違いを計算したものがこのグラフです。
元本100万円と年利回り5%と同じ条件にもかかわらずグラフの線の上がり方、利息の増え方が違うのがわかると思います。
これは三菱UFJ銀行のスーパー定期預金の商品説明のページですが、定期預金には単利型と複利型があり、利息の付き方が変わるので定期預金を考えている方は自分がどちらの利息の付き方が好ましいのかしっかり確認するようにしましょう。
コラム 累乗計算の簡単なやり方
累乗計算は図のように簡単に電卓で求めることができます。もちろんiPhoneなどスマートフォンの電卓でも出来るので、投資の利回りを計算するときに役立ててください。
得する金利・損する金利
それでは実際に身近な暮らしにかかるお金を例にして金利で得をする場合と損する場合をみていきましょうか。
簡単な計算も含め、金利・利回りの意識付けが出来るよう大まかにまとめてみました。
計算式は他にも応用できるので自分の身近にあるコストを計算するのに活用してもらえれば幸いです。
特売日にまとめて買い物しよう
日用品などは特売日にまとめて買う方がお得なのは言うまでもないですよね。例えばドラッグストアなんかでは10%クーポンが貰えたり、ポイントカードを持っていたら1%はポイントも貰えるのでお得に買い物できます。
上の図の計算式を参考に、たとえばドラッグストアで1000円の買い物で10%の割引があったとしたら900円でお買い物が出来ますよね。逆転の発想でいくと900円が11%増えて1000円になったということです。
年間12回、10%割引日に買い物したとしたら10,800円を年利11%運用して12,000円になったということです。
※実際の買い物でドラッグストアで1,000円でまとめ買いは難しいですが、わかりやすいようにキリのいい数字で説明しています
では次もお買い物を例に説明しましょう。
10%ポイント還元か現金割引か?
家電量販店などでは商品代金の10%をポイント還元しますとかいう謳い文句みかけますよね。
10%ポイント還元するならそのぶん値引いて販売すればいいのになとか思うのですが、店舗なりの都合があるのでしょう。それは置いといて、例えば欲しかった小売価格10万円のテレビがY店では10%ポイント還元、K店では10%割引価格ではどちらが得でしょうか。
同じように思えますが、上の図を参考にK店の10%割引のほうが9万円の支出で10万円の買い物が出来たので利回りで考えると、現金としてお金が残るのでお得と言えるでしょう。
もちろん10%ポイント還元してくれるY 店も、10%のポイント分の1万円分はポイントとして貰え、そのポイントでテレビ台を付けたりすると考えるとお得と思えますが、Y店でしかポイントは使えないので自由度でみると現金で割引いて販売しているお店で買う方が得です。
心理的には10万円の買い物でテレビ台が貰えたと思い満足感は生まれますが、現金が1万円あって家具屋さんで似たようなテレビ台が家電量販店よりも安価に売ってる可能性も否定できません。
そしてポイントはいくら貯めてもその店舗でしか使えないのと、ポイントには利息が付きません。10万円のテレビを9万円で買えて、残った1万円を預金するなり投資信託にあてたら微々たる金利でも運用したら多少はお金が増えますよね。
30万円のテレビが10%割引で買えるなら、3万円浮くと思えば結構な金額と思います。
どうですか金利・利回りについて少し身近に感じるようになりましたか?わかりやすいようにキリのいい金額と比較的安価な金額で計算したので、なんとなく理解できたなら幸いです。
計算式も図に載せてますので、一度普段の買い物でも応用してみてください。
住宅ローン金利と預金金利
大まかに金利・利回りの考えをみたところで、ここからは少し踏み込んだお話をしましょうか。
家計でもバランスシート(貸借対照表)を見直すだけでも立派な利回りの考え方の一つです。
株や投資信託、FXなどリスクを取らずに運用する方法です。
バランスシート(B/S)とは会社の決算などで資産となるものと負債になるものをわけた表です。簿記とか会計の勉強をしたことある方ならご存知でしょう。
現金・預貯金や家などの不動産など資産となるものは左側に、住宅ローンや自動車ローンなどの負債(借金)は右側に書きます。資産と負債を相殺し残った資産が純資産になります。
日本のように超低金利で預貯金をしていても定期預金で約0.02%でしょうか。優遇条件などを受ければ0.2%の利息がつくものもありますが、ここでは中央値の0.02%と仮定します。
住宅ローンに関してはフラット35などありますが、2010年ごろに固定金利で住宅ローンを組んだ方はおよそ2%の金利で借りた方もいるでしょう。
企業のファイナンスのお話をすると、利息がほとんどつかない預貯金を取り崩して、借入の一部を返済し金利負担を減らすのは会社の財務改善などでは常識的な話なんです。(借入をすると節税効果もありますがとりあえず無視で)
この考えを家計にも取り入れようとした場合、余剰預金の一部を住宅ローンの繰上げ返済にあてるとそれだけで一年あたりの金利負担は減らすことができます。
図で示したように金額は19,800円とわずかですが、預金利息0.02%で200万円預けていても貰える金利は400円(税金は無視)ほどですが、200万円から100万円を住宅ローンの繰上げ返済にあてれば1年あたりでみれば19,800円得をしたことになります。
流動性が高い現金・預貯金はいざというときのためにある程度の蓄えは必要ですが、FPとしてアドバイスするとしたら向こう3ヶ月間生活が出来る預貯金があれば必要以上に貯め込まなくてもよいと言えます。特に日本の場合は失業保険など充実した社会保障制度があります。
超低金利時代でもお金の流れをうまくコントロールすることも立派な利回りの考え方といえます。
保険料は一括納付でお得
生命保険や自動車保険などの保険料は一括払いか年払いにすると割引などの優遇措置があります。
国民年金を例にしてみてみましょう。国民年金に一年分の年金保険料を一括で納付できる一括前納という制度があります。
令和4年度の国民年金保険料を例にすると1ヶ月ごとの支払いだと16.590円(月)×12ヶ月なので、毎月払いだと年間で199,080円を納めることになります。
では国民年金の一括前納制度で支払うとすると3,580円(-1.8%)割り引かれて195,550円の支払いで済むようになります。
単純計算では1.8%割引となりますが、金利は複利効果で考えないといけません。日本年金機構のHPに載っていますが複利で計算すると約4%の利回りで運用したことになります。
これは一括前納金の199,550円を原資にして、毎月払いの16,590円を払ったと仮定し、最終的に年金保険料が0円になるように複利で計算した利回りになります。(エクセルで計算できます)
国民年金を例にしましたが、自分が掛けている保険、そしてNHKの受信料なども一括払いで割引の優遇があるので、ぜひ確認してみてください。
高い金利の外貨預金のカラクリ
金利を知ると世の中のお金のことがクリアに見えてくるようになってきます。
では少し頭の休憩も兼ねて少し面白いお話を。
円預貯金の利息が低いので外貨預金を検討するのも一つの手段です。しかも日本は1ドル130円台に突入(2022年6月時点)し、リスク分散のために外貨も今後は視野に入れていかなければなりません。
図は某銀行の外貨定期預金の案内です。米ドル外貨定期預金1ヶ月をみると金利8%と高利回りで魅力に思えますよね。
しかしその下に注記事項のところに自動継続の場合は外貨からの金利が適用されるので、表のままでいくと1ヶ月満期定期預金だと2ヶ月目からは0.50%の金利しかつかないんです。
しかも年利8%なので単純計算で最初の1ヶ月につく年利は0.67%のみなんです。2ヶ月目も年利0.5%の金利なので1ヶ月あたり0.042%しか金利はつきません。なので実際の年利は1.1%ということになります。
円預金よりも金利は良いですが、盲点をつかれているようですよね。
もちろん詐欺ではないですが、金利・利回りがつくものに手を出すときは商品説明をしっかり読み込むことも大切と思い、記事に載せることにしました。
損する金利・リボ払い
得をすることだけが金利ではありません。お金を借りているということは、それ相応の対価を支払うことも必要ですよね。
住宅ローン金利もしかり、たとえば身近なものとしてクレジットカードの分割払いやリボ払い、そしてキャッシングローンなどでしょうか。
分割払いやリボ払い、またはカードローンを利用した場合、日本のクレジットカード会社の平均的な利息は12〜18%くらいでしょうか。20%を超える貸金は違法になります。
今回はリボ払いを例にしましょうか。10万円の商品を毎月の支払い設定額を1万円にしていて、ある程度残金が減ってきたくらいにカード会社から『毎月の支払い設定額を7000円に下げられます』といった案内がきたりしませんか。
これも巧妙にリボ払い利用者から利息を少しでも多く取るための手段なんです。今まで毎月1万円払っていたものが、翌月から7000円でいいと言われたら支払いの負担が減るのでつい支払い金額を変更したくなりますよね。
しかし、支払い額を途中で低く変更するとリボ利用分の元本部分の返済額が減ってしまうので、完済するまでの期間が長くなってしまうのとその間に付く金利負担も増えてしまうことになります。
利用者の返済負担というよりも出来るだけ多く利息を取りたいカード会社の思惑がみてとれます。
反対にスマートフォンの分割払い、家電などのショッピングローンとかだとキャンペーンで金利手数料を店舗側が負担とかありますよね。そういうものは大いに利用する価値があります。最低でも一年は使うような家電やパソコン、スマートフォンなど金利手数料無料なら時間的な価値で考えると購入まで貯めるよりもはやくに手に入れることが出来るからです。
株の取引もスマホでできますし、スペックの高いパソコンを金利手数料無料のローンで手に入れて今が旬の動画編集といったスキルを身につければ、お金にかえることも可能ですよね。
ローン(借金)も金利との付き合い方を考えれば時間的な面でも得をすることもあれば損をすることもあるということです。
株式投資の利回り
では最後に、私が得意といいますか株式投資における利回りのお話をしましょうか。
今まで述べてきたことは金利・利回りの俯瞰的に説明してきました。なんとなく理解できたでしょうか。
また以降のブログでも載せていきますが、あらゆる投資には金利すなわち利回りの考えは重要です。利回りがマイナスになるなら投資する意味がないですよね。
株式投資で大切な利回りというと配当利回りと株式益回りでしょうか。
図をもとに解説していきましょう。個別銘柄よりも東証プライム全銘柄で説明します。日経新聞の株式情報欄には東証上場銘柄の株式益回りと平均配当利回りが日々更新されています。
株式投資をしている人は注目している指標でもあります。
株は売却益(キャピタルゲイン)と配当金を得て運用する(インカムゲイン)方法の2通りありますよね。
配当金狙いで考えると企業が稼いだ利益をどのくらい株主に還元しているかが大切です。配当利回りとは一株あたりの配当金をリアルタイムの株価で割って計算される利回りです。市場で売買している以上、配当利回りは変化しますが配当金狙いで株を購入してどれだけペイされるかみるのに重要な指標になります。
そして配当利回りで注意しなければいけないのは、配当利回りを計算するときは今期の配当金をみなければいけません。前期の配当金じゃなくて、今期でもらえる配当金です。
では株式益回りについて説明しましょう。株式益回りとは、一株あたり純利益(EPS)を株価で割って計算される指標です。ちなみにこの逆数をPERと呼びます。
株式益回りとは一株あたりどれだけその会社が利益を上げたかをみる指標です。株の世界ですと、米国の金利があがるとハイテク株などの高PER株が売られるといいますよね。これは実力よりも期待値で大きく買われているハイテク株は、高PERの逆数の株式益回りにすると利回りが低くなってしまいます。
ですので金利が高くリスクの低い債券に投資した方が利回りがよくなるので、ハイテク株から債券に資金がシフトするんです。こちらのブログで詳しく解説していますのでぜひ『金利変動と株価、為替の関係をわかりやすく解説』
話はそれましたが、この株式益回りのもとになる一株あたり純利益すなわち税引き後純利益のうちどれくらいの割合を株主に還元しているかをみるのが配当性向というやつです。
色々と説明しましたが、株式投資でみる重要な利回りの指標は配当利回りと株式益回りということです。
また今後解説予定の株式投資の記事で企業比較や配当利回りから株価を予測する方法など解説していきますので、楽しみにしていてください。
最後に
今回の記事はいかがでしたか。超低金利時代の日本、銀行に預けていても利息収入は微々たるものですよね。
預けるときの利息は低く、ローンなどで借りるときは高い金利で借りていることに気付いたでしょうか。
金利が低い日本だと金利の恐ろしさを実感することはあまりありませんが、日常のちょっとしたことから金利・利回りの考え方が意識付けられたらと思い、今回記事にしました。
内容的には身近な例を参考にシンプルでわかりやすくしたつもりですので、簡単な計算を自分でやりながら得をするのか損をするのか参考になれれば幸いです。
利回りについては、不動産投資・投資信託・株式投資と個々により詳しく解説していく予定ですので、引き続きよろしくお願いします。
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